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緑に睡る 〜運命の森〜
第2章 第二の男
青山の部屋に入ったのは初めてであった。
東翼の南向きの一番広い間取りのゲストルームを彼は使用していた。
その部屋は居間に寝室、書斎にドレッシングルーム、広々としたバスルームまで付いた特別な部屋であった。
これだけでも、いかに公彦が彼を丁重に扱い一目置いているかが推し量られた。

青山は紳一郎を部屋に招き入れるとソファに座るように勧め、タイのノットを緩めながら
「…嫌じゃなければ音楽をかけるよ。私は音がないと落ち着かないタチでね」
と声を掛け、窓際に置かれた蓄音機にレコードをセットした。
「どうぞお好きに」
肩幅の広いすらりと背の高い、後ろ姿からでも成熟した上質な男の色香が満ち溢れている…。
青山はそんな男だった。
…紳一郎が好きなのは、十市のように野性味溢れ逞しくも牡の匂いがだだ漏れるような男だ。
だが、青山の高貴なる王者のような気高い中にもどこか婀娜めいた男の薫りがする男にも目を奪われずにはいられない自分がいることに驚く。

ネクタイを取り、ワイシャツの第一ボタンを外した男の喉元から眼を逸らす。
青山は予め用意させていたらしい高価なシャンパンをワインクーラーから取り出し、バカラのグラスに注いだ。

「今日は十市くんのところには行かないの?」
さらりと尋ねられる。
「…馬丁が体調を崩して、お見舞いに行っています。十市はとても良く効く煎じ薬を作るんです。それを持って…」
青山は紳一郎にグラスを渡しながら、素直に感心した。
「ほう。それはすごいね。十市くんは様々な知識を有する賢い森番なんだな」
十市を褒められたことが嬉しくて、紳一郎は思わず青山に笑いかける。
「ええ。十市は本当に頭も良いし、何でも出来るんです。小さな頃は、十市のことを森の魔法使いだと思っていたくらいです」
青山が眼を見張り、まじまじと紳一郎を見つめた。
「…何ですか…?」
訝しげに尋ねるのに対して、青山は首を振りふっと微笑った。
「いいや。…君が嬉しそうに笑ったところを初めて見たと思ってね。…君は笑うととても可愛いらしいんだね」
紳一郎はばつが悪そうに笑みを引っ込め、つんと顎を逸らせる。
「揶揄わないで下さい」
青山は陽気な笑みを浮かべ、両手を広げて見せる。
「揶揄ってなんかいないさ。正直な感想だ。…少し妬けるなあ…ともね」
そう言うと青山は、紳一郎のグラスに己れのグラスを軽く触れ合わせた。


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