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緑に睡る 〜運命の森〜
第1章 告白
身内だけで形のみの式を挙げ、公彦は鷹司家の入り婿となった。
フランス製の純白のレースのウェディングドレスは、蘭子に良く似合った。
迫り出した腹部を白い薔薇のブーケで隠すようにすると、蘭子は無垢で幼気な処女のようにも見えた。
…女は魔物だとまざまざと思い知らされた。

公彦と蘭子は未だに夫婦の営みはない。
夫婦の寝室はあるが、未だかつて使われたことはない。
式を挙げた時には蘭子は臨月の身重の身体だったし、紳一郎が生まれてからも、彼女を抱く気にはなれなかった。
子どもを作ることが出来ない自分が蘭子を抱いてもまるで砂上に城を築くような虚しさを感じたし、蘭子の淫蕩すぎる美しさは、余りに異質すぎて畏怖感が先に立ったのだ。

紳一郎を出産してからの蘭子は、まるで自分が鷹司家に対する義務は全て果たしたというかのように、自由奔放に男漁りに耽る妖婦と化した。
さながら花から花へひらひらと飛び回る妖しくも美しい蝶のように…。

屋敷にもほとんど寄り付かない。
生まれたばかりの紳一郎の育児は全て乳母とナニーと家政婦など使用人の手に委ねられた。
貴族の世界では母親自らが世話や育児はしない。
だからそれは珍しいことではないのだが、蘭子には根本的な子どもに対する愛情や関心が欠けていた。
たまさか屋敷にいても、紳一郎を乳母の手から抱こうともしない。
ちらりと紳一郎を眺め、また無関心そうに視線を外すと何処かへ行ってしまうのだ。

…駆け落ちまでしようとした相手との子どもを…可愛くはないのだろうか?
公彦は蘭子の無関心さに信じられない思いがした。

紳一郎は大人達の思惑をよそに、健やかに…そして美しく成長した。
その整った顔立ちは蘭子に良く似ていた。
父親だという森番を公彦は知らないが、母親に似た紳一郎に公彦は心から安堵した。
もし、紳一郎が公彦と全く異質な顔立ちに成長したら本人が悩むのではないかと思ったのだ。

…やがて紳一郎はどうやら両親の関係が複雑であり、母親は自分に無関心だと何となく悟ってからは、達観した聞き分けの良い子どもへと成長を遂げた。
公彦は紳一郎を可愛がった。
まるでそれが完全なる打算で結婚した自分の紳一郎への罪滅ぼしであるかのように…。

紳一郎も公彦に懐いた。
…しかし、公彦以上に懐き、慕った人物がいた。

それが森番が残していった彼の息子だという十市だった。








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