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緑に睡る 〜運命の森〜
第2章 第二の男
「…十市くんのことを考えているの?」
占い師のように当てられ、紳一郎は思わず青山を見上げる。
「何で…」
可笑しそうに笑いながら、紳一郎のほっそりとした腰を抱く。
「そりゃ分かるよ。君は十市くんのことになると実に柔らかな表情になるからね」
「…そうですか…」
仏頂面で答える紳一郎をじっと見下ろし、驚くほどに優しい声で呟いた。
「やっぱり羨ましいな…十市くんが」
その声色にどきりとした紳一郎は慌ててそっぽを向いた。
「史郎さんは…」
「うん?」
「どうしてそんなに僕に構うんですか?」
広い居間で男のリードに軽やかに踊る。
…僕がごく普通の女の子だったら、多分この人に恋をしていただろうな…。
完璧な精悍な美貌、容姿だけでなく家柄、知性、教養、職業、名声…。
欠けるものは何もないほどの見本のような紳士…。
絶対に言いはしないがそう思う。
自分には十市がいるから彼に恋はしない。
…しないけれど…けれどやはりこんな風に踊ったりすれば、心は騒めく。
…十市が好きなだけで自分は同性愛者ではない。
そう青山に言ったが…本当は自信がない。
なぜなら紳一郎には女性との性交経験はないし…考えただけで悪寒が走るからだ。
十市が失踪していた間、恋愛もどきの経験はした。
キスをしたり、身体を触らせたり…と言う軽いものだ。
そして、それらの相手は全て男性だった。
友人の伊勢谷とは際どい性的な接触もした。
彼はとても性技が巧みで、紳一郎に快楽を与えるのが上手かった。
最後の一線は許さなかったが、それでも気にせずに未だに紳一郎を可愛がりたがる。
…そしてその行為は、決して嫌ではなかった。
そんな自分は、やはり同性愛者なのだろう…。
「…君が好きだからさ」
さらりと言う言葉を、紳一郎は全く信用する気にはなれない。
「何人にそう言っているんですか?」
形の良い眉を上げ、片頬で笑う。
「…あの乗馬のお仲間、こないだオペラを観に行かれた方も…あの方、美男子で有名な田嶋侯爵のご子息ですよね?…この二週間にだってこんなにたくさん…」
青山は愉快そうに笑い、艶な眼差しで紳一郎に貌を近づけた。
「随分と気にしてくれているじゃないか。…もしかして、少しは妬いてくれてたの?」
紳一郎はにやりと笑い肩を竦める。
「全然」
「…あ、そ…」
がっかりしたような青山が可笑しくて、紳一郎は小さく笑った。
占い師のように当てられ、紳一郎は思わず青山を見上げる。
「何で…」
可笑しそうに笑いながら、紳一郎のほっそりとした腰を抱く。
「そりゃ分かるよ。君は十市くんのことになると実に柔らかな表情になるからね」
「…そうですか…」
仏頂面で答える紳一郎をじっと見下ろし、驚くほどに優しい声で呟いた。
「やっぱり羨ましいな…十市くんが」
その声色にどきりとした紳一郎は慌ててそっぽを向いた。
「史郎さんは…」
「うん?」
「どうしてそんなに僕に構うんですか?」
広い居間で男のリードに軽やかに踊る。
…僕がごく普通の女の子だったら、多分この人に恋をしていただろうな…。
完璧な精悍な美貌、容姿だけでなく家柄、知性、教養、職業、名声…。
欠けるものは何もないほどの見本のような紳士…。
絶対に言いはしないがそう思う。
自分には十市がいるから彼に恋はしない。
…しないけれど…けれどやはりこんな風に踊ったりすれば、心は騒めく。
…十市が好きなだけで自分は同性愛者ではない。
そう青山に言ったが…本当は自信がない。
なぜなら紳一郎には女性との性交経験はないし…考えただけで悪寒が走るからだ。
十市が失踪していた間、恋愛もどきの経験はした。
キスをしたり、身体を触らせたり…と言う軽いものだ。
そして、それらの相手は全て男性だった。
友人の伊勢谷とは際どい性的な接触もした。
彼はとても性技が巧みで、紳一郎に快楽を与えるのが上手かった。
最後の一線は許さなかったが、それでも気にせずに未だに紳一郎を可愛がりたがる。
…そしてその行為は、決して嫌ではなかった。
そんな自分は、やはり同性愛者なのだろう…。
「…君が好きだからさ」
さらりと言う言葉を、紳一郎は全く信用する気にはなれない。
「何人にそう言っているんですか?」
形の良い眉を上げ、片頬で笑う。
「…あの乗馬のお仲間、こないだオペラを観に行かれた方も…あの方、美男子で有名な田嶋侯爵のご子息ですよね?…この二週間にだってこんなにたくさん…」
青山は愉快そうに笑い、艶な眼差しで紳一郎に貌を近づけた。
「随分と気にしてくれているじゃないか。…もしかして、少しは妬いてくれてたの?」
紳一郎はにやりと笑い肩を竦める。
「全然」
「…あ、そ…」
がっかりしたような青山が可笑しくて、紳一郎は小さく笑った。