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緑に睡る 〜運命の森〜
第2章 第二の男
紳一郎は冷たい木枯らしが吹き荒れる中、コートだけを羽織り、領地外れの十市の小屋に駆け込んだ。

十市はまだ帰宅していなかった。
寒々とした部屋のランプの灯りを灯すと、素朴な木の椅子に腰掛ける。

身体が細かく震えるのは寒さばかりのせいではない。
青山から掛けられた言葉と…微かに触れ合った唇のせいだ。
紳一郎は唇を噛み締め、拳を木のテーブルに叩きつけた。

…誰が…誰があんな奴に心を赦すものか!
好きなのは十市だけだ。
他の人間はどうでも良いのだ。

…けれど…。
震える指先が冷たい唇に触れる。
…青山の唇が一瞬触れた瞬間、身体に電気が走ったような衝撃を受けた。
…それは…甘美とも言って良い衝撃であった。
その事実が紳一郎を叩きのめした。
…僕は…あんな男に触れられて、快感を覚えるのか?
僕はあの男なんて好きではないのに…。
どうして…。

僕が同性愛者だから?
…それとも…。

紳一郎は自分の身体を両腕で抱きすくめる。
…この身体に流れる母様の淫らな血のせいなのか…?

切れるほど唇を噛みしめる。
…最悪だ…!

…窓の外から地面を踏みしめる足音が聞こえた。
ドアが静かに開かれる。
カンテラを持った十市が室内を照らし、椅子に座っている紳一郎を認めると、驚いたように眼を見張った。
「坊ちゃん!来ていたんですか」
「…十市…」
ぼんやりと首を巡らし、十市を見上げる。
「寒いでしょう?暖炉の火を入れて良かったのに…」
紳一郎の肩に自分が脱いだ革の上着を着せかけ、十市は足早に暖炉に向った。
手早く燐寸を擦り古新聞に火を焼べ、薪を重ねる。
「…下村の爺さんはだいぶ良くなっていましたよ。
俺の煎じ薬が効いたって喜んで…」
紳一郎が十市の背中に抱きついた。
「…十市…!」
胸に回した手を十市の節くれ立った手が優しく包み込む。
「…何かあったんですか?坊ちゃん」
紳一郎は首を振る。
「…何も…何もないよ…」
硬く引き締まった男の身体を強く抱く。
「ねえ…キスして、十市…」
背中に貌を埋めたまま、懇願する。

十市が黙って紳一郎の方を向き直り、両手で貌を引き寄せる。
「…坊ちゃん…」
ひび割れた乾いた唇が紳一郎の唇を覆う。
…口髭が触れ、ぞくりと背筋に甘い旋律が走る。
ごつごつした手が紳一郎の貌を愛しげに撫で回す。
…上等な絹のような青山の手とはまるで違う…しかし大好きな手だ。


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