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緑に睡る 〜運命の森〜
第2章 第二の男
「…自分を抱いた男が実の兄かもしれない…いや、ひょっとすると実の父親かもしれない…。
紳一郎くんは悩み苦しんだことだろうね。…しかもその男は自分を抱いた翌日にいなくなった。
…可哀想に…。心情を察するに余りあるよ」
十市のアメジスト色の瞳が途端に鋭い光を帯びた。
「君と紳一郎くんとの関係は知っているよ。」
「…青山様…」
「君と紳一郎くんは血の繋がりはないそうだね。
蘭子さんは意外に純愛を貫いておられたのだ。
紳一郎くんから罪の意識は消え去ったことだろう。
…けれどね、私は紳一郎くんの悩み苦しむ苦渋の表情が見たかったよ。
あのひんやりとした冷たい美貌が哀しみ、苦しみ、もがいた表情を…どれほど美しかっただろう。…見られなくて残念だったよ」
「あんた…坊っちゃまが好きなのか⁉︎…この間、坊っちゃまに何かしたのか⁈」
男は初めて憤った感情を露わにする。
礼を失した十市に気を悪くした様子もなく、和かに笑う。
一歩踏み出すと、その切れ長の冴え冴えとした眼を細め、囁いた。
「…言わないとフェアじゃない。
…実は私は鷹司に頼まれたのだよ。紳一郎くんを誘惑し、君から引き離すように…とね」
十市はその彫りの深い眼差しに驚きの表情を浮かべ、眼を見張った。
「旦那様が?」
「…鷹司は心配なのだよ。血が繋がらないとは言え、君は紳一郎くんの実の父親の息子だ。…その上、生粋の外国人で…」
不意に青山は表情を引き締めた。
「…ここ最近、軍部の動きがきな臭くなっているのを知っているか?
外国人の流入は制限され、身分のチェックも厳しくなっている。…少しでも怪しい動きがあれば直ぐに憲兵に連行される。君はスペイン人とギリシア人の混血な上に、父親は消息不明だ。…下手をするとスパイと疑われ兼ねない。
…鷹司は紳一郎くんをとても大切に思っている。
外国人で身分が不安定な君より、素性が確かで自由な立場の私に紳一郎くんを託したいと思っても不思議はない。
同性愛者の恋愛は難しい。長く続くのは奇跡に近い。
…将来紳一郎くんが不幸にならぬように…と。
切ない親心だ」

黙って青山の話を聞いていた十市が、鋭い眼差しで青山を見据えたまま低い声で尋ねた。
「…あんたの気持ちはどうなんだ?…あんたは坊っちゃんを好きなのか?」




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