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緑に睡る 〜運命の森〜
第2章 第二の男
青山は腕を組み、さらりと答えた。
「…自分でも驚くほど、彼に惹かれているよ…」
…今朝方、学校に通学する為に黒塗りのメルセデスに乗り込む紳一郎を見送った。
通りすがりに紳一郎の手を捉え、その作り物のように美しい手の甲に軽く唇を押し付けた。
「…行ってらっしゃい。…今日も眼が覚めるほどに綺麗だよ」
紳一郎は容赦なく手を振り払い、冷たく青山を睨みつけると無言のまま車に乗り込んだ。
青山は少しも気にせず、朗らかな笑みを浮かべたまま、紳一郎の車を見送った。

脆い玻璃のような美貌が硝子越しに輝いていた。
冬の光に照り映えるような美しさだ。
…綺麗な子だな、本当に…。

「私は元々少年愛の趣味はないのだよ。
成熟した美しい男性が好きなのだ。…若いということは愚鈍と同義語だからね…だが…」
…彼は違った。
冷たいまでに美しい容姿の内側には滾るような情熱と…そして匂い立つような色香が溢れていた。

「…あんたは…坊ちゃんと寝たいのか?」
率直すぎる言葉に青山は眉を上げる。
青山の周りにはそのように品のない言葉を使う者はいないからだ。
しかしそれはこの森番の紳一郎に対する熱い想いを表す言葉だということが直接的に伝わり、少しも不快な気持ちにはならなかった。
「…俺は学もないし品もないし…あんたみたいに完璧な雲の上の紳士とは生きる世界が違う。
取るに足らない人間だ。
…だけれど、坊ちゃんに対する愛は誰よりも負けない自信がある。
俺は坊ちゃんのためなら死ねる。
…だから、あんたが坊ちゃんに何かしようとするなら容赦はしない。
…あんたの周りにいる人種とは違うんだ。手段も選ばない。
覚悟をしておいてくれ」
十市のアメジスト色の眼差しに強い意志の光が読み取れ、それはさながらアレクサンドライトのように刻々と色を変え始めていた。

その美しい瞳に思わず魅せられながら、青山はふっと笑った。
「君は何か勘違いしているようだね。…私は君と紳一郎くんの仲を引き裂くつもりは毛頭ないよ」
十市は濃い褐色の眉を顰めた。
「だが、あんたは坊ちゃんを好きなんじゃないか?」
怪訝そうな貌をする十市ににっこりと笑いかける。
「…ああ、好きだよ。おそらくは恋していると言っても良いかもしれないね」
「…じゃあ…」
青山は十市をじっと見つめる。
「だが、紳一郎くんを君から奪う気はない」
…儚い花弁のような雪が舞い始めた。
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