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緑に睡る 〜運命の森〜
第2章 第二の男
十市はそのアメジスト色の瞳を見開き、首を振った。
「…あんた…何言ってんだ」
青山はまるで美しい夢を語るような口調で、話し始めた。
「君たちの邪魔をする気はない。…いや、寧ろ私を君たちの仲間に加えて欲しいのだ。
…君たちが愛し合うところを私に見せてくれ。
…そして、もし君が許す気になったら、君たちと私…三人で愛し合わないか?」
その瞳には邪悪な邪心など一切なかった。
揶揄うような口調でもない。
…だがその声色には匂い立つような雄の色香が溢れていて、十市の神経を逆撫でするには充分なものだった。

その突拍子もない発言を十市は到底受け入れることは出来ずに、憤りを露わに青山の前に進み出た。

「馬鹿なことを言わないでくれ。俺が坊ちゃんをあんたと共有するわけないだろう。
…二度とこんな馬鹿げたことは言わないでくれ」
そう言い放つと十市は青山の前から通り過ぎようとした。

その刹那…上質の絹のようにしなやかな声が十市を追いかけてきた。
「…私なら紳一郎くんだけでなく、いざとなったら君も守ることが出来る」
十市のワークブーツの脚が止まる。
「…君がこの国に居られなくなった時に、私には君を守る力がある。
…それは引いては紳一郎くんの幸せにも繋がるのでないか?」
十市がゆっくりと振り返った。
アメジスト色の瞳は濃い黒瑪瑙色へとその色調を変えていた。
「…俺は自分の保身のために坊ちゃんを犠牲になんかしない。そんなことをするくらいなら、死んだほうがましだ」
そう言い捨てると、足早に立ち去った。

青山は柵にもたれかかると愉快そうに笑った。
「…気骨がある男だ。益々興味が湧いたよ」
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