この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
緑に睡る 〜運命の森〜
第2章 第二の男
…伊勢谷と寝たことはないが、際どい性的な戯れは何度かしたことはある。
学院で、紳一郎に恋心を抱くものは多い。
しかし紳一郎はそれらの者達に一切見向きもしなかった。
告白されても、全く温度のない声で毛筋ほども表情を乱さずに断った。
それに対して、中には思い詰めて脅迫まがいの行動に出ようとした上級生もいた。
そんな上級生から巧みに守ってくれたのが伊勢谷であった。
伊勢谷がするりと冗談ごとにするかのように紳一郎を庇うと、相手もふっと我に返り、おとなしく引きさがるのだ。
少し困惑した端正な貌で、紳一郎は伊勢谷に礼を言った。
「…君に礼を言わなくてはならないな」
伊勢谷は可笑しそうに笑い、紳一郎の肩を引き寄せた。
「礼には及ばない。…本当は僕も奴らと同じ欲望を持っていたのだから」
「…と言うと…?」
黒く濡れた瞳が伊勢谷を見上げた。
その瞳に誘われるように伊勢谷は静かに紳一郎の唇を奪った。
しっとりとした唇を味わうように己の唇で挟み、柔らかく吸う。
そっと唇を離すまで、紳一郎は身じろぎをしなかった。
「…驚いたな。殴られるかと思った」
眼を見張る伊勢谷に、唇を歪める。
「…助けてくれた礼だ」
伊勢谷の女のように優しげな貌が破顔した。
紳一郎の白磁のような頬を両手で挟む。
「随分安売りしてくれるんだな。…というか…紳一郎、君、経験があるの?」
形の良い眉が嫌そうに歪む。
「どうでも良いだろう。そんなこと」
紳一郎が自分より少し背が高い伊勢谷の唇にそれを押し付ける。
「…こんなこと、大したことじゃない」
そう言って伊勢谷をその場に押し倒し、制服のジャケットを脱ぎだした。
伊勢谷は片肘を突きながら身を起こす。
名門華族の御曹司、鷹司紳一郎が冷ややかな美貌を変えることなくシャツを肩から滑らす姿のその匂い立つような淫蕩さに眩暈を覚えた。
紳一郎はその紅い唇に薄く笑みを浮かべ、伊勢谷に覆いかぶさった。
「…僕には淫乱な血が流れているんだ。…母と…そして誰だか分からない父親の…。
考えるだけで陰鬱な気分になるよ…」
…紳一郎がもたらすキスと愛撫は、夜の闇に咲く花の香りがした…。
そうして2人は時折、膿んだような退廃的な淫靡な戯れを繰り返したのだった。
学院で、紳一郎に恋心を抱くものは多い。
しかし紳一郎はそれらの者達に一切見向きもしなかった。
告白されても、全く温度のない声で毛筋ほども表情を乱さずに断った。
それに対して、中には思い詰めて脅迫まがいの行動に出ようとした上級生もいた。
そんな上級生から巧みに守ってくれたのが伊勢谷であった。
伊勢谷がするりと冗談ごとにするかのように紳一郎を庇うと、相手もふっと我に返り、おとなしく引きさがるのだ。
少し困惑した端正な貌で、紳一郎は伊勢谷に礼を言った。
「…君に礼を言わなくてはならないな」
伊勢谷は可笑しそうに笑い、紳一郎の肩を引き寄せた。
「礼には及ばない。…本当は僕も奴らと同じ欲望を持っていたのだから」
「…と言うと…?」
黒く濡れた瞳が伊勢谷を見上げた。
その瞳に誘われるように伊勢谷は静かに紳一郎の唇を奪った。
しっとりとした唇を味わうように己の唇で挟み、柔らかく吸う。
そっと唇を離すまで、紳一郎は身じろぎをしなかった。
「…驚いたな。殴られるかと思った」
眼を見張る伊勢谷に、唇を歪める。
「…助けてくれた礼だ」
伊勢谷の女のように優しげな貌が破顔した。
紳一郎の白磁のような頬を両手で挟む。
「随分安売りしてくれるんだな。…というか…紳一郎、君、経験があるの?」
形の良い眉が嫌そうに歪む。
「どうでも良いだろう。そんなこと」
紳一郎が自分より少し背が高い伊勢谷の唇にそれを押し付ける。
「…こんなこと、大したことじゃない」
そう言って伊勢谷をその場に押し倒し、制服のジャケットを脱ぎだした。
伊勢谷は片肘を突きながら身を起こす。
名門華族の御曹司、鷹司紳一郎が冷ややかな美貌を変えることなくシャツを肩から滑らす姿のその匂い立つような淫蕩さに眩暈を覚えた。
紳一郎はその紅い唇に薄く笑みを浮かべ、伊勢谷に覆いかぶさった。
「…僕には淫乱な血が流れているんだ。…母と…そして誰だか分からない父親の…。
考えるだけで陰鬱な気分になるよ…」
…紳一郎がもたらすキスと愛撫は、夜の闇に咲く花の香りがした…。
そうして2人は時折、膿んだような退廃的な淫靡な戯れを繰り返したのだった。