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緑に睡る 〜運命の森〜
第2章 第二の男
伊勢谷に指示された小客間は、ヴィクトリア調の家具で統一された格調高く、豪奢な部屋だった。
既に連絡が行っていたらしく部屋のシャンデリアは明るく灯り、暖炉は赤々と燃えていて暖かかった。

伊勢谷家を訪れたことは何度かあるが、それぞれの部屋が意匠に凝り、高価なアンティークの家具が見事に配置されている様に今更ながらに驚かされる。
伊勢谷の父は爵位はないが子爵家の末弟で、潤沢な財産分けをして貰い、それを元手に会社を起業したと聞いた。
そこここに貴族的趣味が垣間見られるのは、その為なのだ。

部屋に入るなり、青山は紳一郎の背後から悪戯めいた口調で囁いた。
「…君の方から部屋に誘われるとは思わなかったな。
…光栄だ」
紳一郎は青山を邪険に押しやると、つかつかと椅子に近寄り無造作に座った。
「勘違いしないで下さい。…これから話す内容がとても公衆の面前で出来ることではないから仕方なくです」
青山は可笑しそうに眉を上げ、肩を竦めて見せた。
彼にはこれから紳一郎が口を開く話の内容を承知しているようだった。

まるでこの家の主人のように堂々と紫檀のキャビネットの扉を開き、極上のブランデーとバカラのグラスを取り出す。
「少しくらいいいだろう?身体が暖まる」
「ええ。構いません。僕も酒でも入らないと、貴方に何を言いだすか分からない心境ですからね」
挑むような眼差しの紳一郎の瞳は暗闇の中で輝く高貴な女豹のように煌めいていた。
青山は益々機嫌を良くしながら、グラスに注いだブランデーを紳一郎に手渡す。

「…怒り狂った君に罵倒されてみたかったな」
「貴方はやっぱり頭がおかしいです」
「綺麗な子に翻弄されるのが好きなんだ。
…君はファムファタールタイプだな。…一見冷ややかで体温が低めで感情の起伏に乏しく見えて、実は内側に激しい炎を秘めている。…その炎が君に恋する男を焼き尽くすのさ」
「言葉遊びは好きではありません。…僕は運命の女ではありません。僕は十市だけを愛しています。
この先も、他の誰にも心を動かすつもりはありません。…母のように多情な人間だと思われたのなら不本意です」

最後の最後に紳一郎の本音が溢れ出した。
しまったと言うように、彼は形の良い唇を噛み締め、青山は穏やかに微笑むと、静かに向かい側に座った。


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