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飴色トライアングル【完結】
第18章 始まりの合図…
とにかく誰にも邪魔されず静かに話せる所に行こうと思った。
「美緒、ここじゃ話せないから来て」
美緒を連れて歩きだそうとしたのに…
「行かない」
バッ、掴んだ腕を激しく振り払われた。
美緒…
やっぱりもう無理なのか?
どうしたらいい?
このまま、諦めろって事?
いや、どうせダメなら最後まで悪あがきして思いの丈をぶつけなきゃ
じゃなきゃ─また後悔する。
ドンッ、ギュッ…
「やだ、ちょっと…離し「離さない」
こんな人通りのある場所で抱きしめるなんて俺だって恥ずかしいけど─
こうでもしなきゃ話を聞こうとしないから
「やめてよ、人が見てる」
「…いいよ見られたって」
話を聞いてくれるまでずっとこうしてるから
「俺の気持ちは前と少しも変わってないよ。今でも美緒が好きだ」
「─グッ…」
美緒の身体が震えてる。
「信じない、そんなの…ゥ─嘘つき」
「嘘じゃない!」
俺を拒絶し必死に離れようとするけど
ちゃんと話が出来るまで離さないから…
抱きしめる手に力を入れた。
「ほんとだよ、嘘じゃないから」
連絡出来なかったのは訳があるんだよ。
「お袋が…倒れたんだ」
「…ぇ、」
美緒の力が一瞬緩んだ。
こんな所で言う話じゃないけど
もう周りなんて気にしてはいられないと思った。
ごめん、いきなりこんな話で…
「あ、でも、もうだいぶ良くなったから大丈夫なんだけど…」
美緒の反応を伺いつつ話を続けた。
「倒れた直後は意識も無くて、緊急手術でなんとか助かったんだ…強いお袋だから頑張れたんだと思うけど」
「……」
重い話で戸惑ったか?
美緒はじっとしたまま動かなくなった…