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一秒に見えた世界
第1章 今日から一応就活します
この人…、厳ついけどかなり男前さんだ。なんか渋い系の俳優さんみたい…

とか顎を掴まれたままの私は一瞬そんな事を思っちゃった。

『社長、お車の用意が出来ました。』

そんな声の方を私が見ると、ちょっと細身の眼鏡をかけた、こちらはとても綺麗な顔をした別の男の人が私の顎を掴んでいた男の人にそう言っていた。綺麗な男の人に社長と呼ばれたその男の人は何故か私にニヤリとしてすぐに私の顎から手を離し私の目の前から立ち去っていた。

私はしばらく立ち去った男の人の背中をぼんやりと見ていた。正直、怖かった。多分、私の人生で2番目くらいに怖かった。空の為に買ったバッグをラッピングしてもらった里美が私のところに戻って来た。

『美奈?どうしたの?なんか赤い顔してるよ。』

『里美~…、怖かったよぉ。』

と私は里美に今自分に起きた事を話した。里美は私の話しを聞くと

『えーっ!?それ、やばくない?この辺ってやばい人の事務所とかいっぱいあるし、顔覚えられたら売り飛ばされたりして?』

とか言い出した。

止めてよ!売り飛ばすとか本当に怖いじゃない!いくら私が適当主義でも、それなりに有名なこの港街でそれを言われたら泣きそうになって来るよ。

そんな事を考える私は凹んだまま、里美と空との待ち合わせ場所へと向かった。待ち合わせ場所で空は私が凹んでいるのを心配してくれてるのに里美は面白おかしく私が売り飛ばされる話しをしてくれる。

『空~…。』

もう妄想だけで既に半泣きの私。空は私の為にそんな里美をたしなめる。男っぽい空はいつも私を甘やかしてくれる親友だ。でも3人で入ったピザ屋さんで空は

『美奈は全く就活してないって今の時期にさすがにそれってやばくない?』

とやっぱり里美と同じ事を私に言う。だから私は段々と腹が立って来ていた。きっと百貨店で怖い思いもしたせいでいつもより私はワインを呑みすぎたからだ。

『ようし、わかった。就活くらいしてやるわよ。今からすぐにでもするわよ。やれば良いんでしょ。』

と言って酔っ払った私は空達に開き直っていた。そのまま、いつも3人で呑みに行くBARへと私は勢いよく向かった。里美はもう今日はもう帰った方が良いとか言ってたけど

『いやよ。私は今日から就活するんだから今夜が呑み収めだもん。』

と支離滅裂な事を言って私はひたすら呑み続けた。
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