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一秒に見えた世界
第9章 バイトじゃない気がする
秋元さんは私の質問にちょっと困った顔をしてからまるで子供に教えるみたいに私に

『長谷川さんは社長のお盆休みが明けてから、いつから仕事をしてたか知っている?』

と聞いて来た。私は普通に

『昨日からです。』

と答えた。

『私達、社員は昨日の日曜日までお盆休みだったけれど社長だけ何故わざわざ日曜日に出勤したか長谷川さんにはわかる?』

とまた秋元さんが聞いて来た。私は秋元さんの言いたい事がよくわからなかった。だから答えに悩んでいる私に秋元さんは

『私と長谷川さんのお仕事は秘書と言って社長が快適にお仕事をする為のお手伝いをするのがお仕事だから社長1人の為のお仕事だよね?でも社長は剣菱建設の下請けまで含めた1万人の社員が快適にお仕事が出来るようにするのがお仕事なのよ。これってどういう事か長谷川さんにわかる?』

私はやっと秋元さんの言葉の意味がわかった。私は優誠と1対1だけど会社では優誠は1対1万なんだ。だから今はこの会社の中では私1人が優誠にわがままを言っている状況なんだと理解した。

『ごめんなさい…。』

私は秋元さんにそう言った。秋元さんは

『お仕事をするのは初めてでしょ?少しずつ覚えたら大丈夫よ。』

と私に笑顔で言ってくれた。私は秋元さんがちょっと好きになった。3時だから私が退社すると結城さんがゴルフの打ちっぱなしに私を連れて行った。

うりゃー!おりゃー!

と私はひたすらボールを飛ばしていた。結果は、ほとんどまともに私のボールは飛ばずに結城さんから

『次からはコーチ付きを予約しておきます。』

と私は言われてしまった。家に帰ると私はクタクタになっていた。仕事をするって大変な事なんだと生まれて初めて理解をした。

ママも優誠も私の10倍は仕事をしているのに、なんで仕事の鬼にとかなれるのかを不思議に思っていたら私はまた寝落ちていた。

翌日はゆっくりと昼前に起きた。いつも通りの昼過ぎには結城さんの登場だ。

そうやって金曜日までを私はそんな毎日を過ごした。金曜日のお昼に優誠がやっと私に

『明日は昼に迎えに行く。』

とたった一言だけ言ってくれた。私はその一言だけで浮かれてしまった。
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