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この香りで……。
第25章 警察署
「それでは、面会は十五分間です」
「……いいですか。彼女も……」
里井は奈々葉の肩に手を置く。
「はい、三名までは……」
と女性警官は深々と頭を下げた。
:
アクリル板で仕切られた六畳ほどの面会室は、面会用にパイプ椅子が三脚並んだだけの殺風景な部屋だ。左手のドアが開く。制服の女性に伴われたジャージ姿の女性が現れた。
――美希……。
ハイという美希の声がして、ドアの方へ小さく頭を下げた。奈々葉と里井の目の前にあるパイプ椅子に腰を下ろす。全く化粧気のないその青白く痩けた顔を向け、深々と頭を下げる。
「美希……」「大丈夫か? 坂村……」
「奈々葉、私、あなたのご主人と……」
美希の目に涙が溢れる。
「美希、何か困っていることはない? 言ってね。必要なモノがあったら……」
「奈々葉、何で……何で怒らないの? 言ってよ。『美希、アンタのこと殺したいほど怨んでる』って……」
美希の手がアクリル板を押した。
「ホントのこと言うと、私、最初はショックで、ショックで自殺も考えたの。だけど、あの時、私も部長と……。だから、あなた……美希だけを責められない……」
奈々葉の頬に涙が伝う。
「……私、奈々葉と部長が羨ましくて……自棄になって……私、あんなにひどいことを……。ごめんなさい、ごめんなさい……」
美希がむせび泣く。
「美希……私、信じてるよ。ね?」
「…………なんで奈々葉、そんなに優しいの? 私、あなたをあんな目にしたんだよ」
「大切な……大切な親友だから……」
奈々葉はアクリル板に手のひらを当てた。美希の手のひらもそこに重なる。
:
トントンと美希の側のドアが叩く音がした。
「そろそろ時間です……」
と、女性警官が促すように美希の背に手を当てる。
里井が自分の腕時計に目をやった。
美希は腰をかがめるように立ち上がる。丸めた小さな背中を押されるように左手にあるドアに歩を進める。
「美希、身体に気を付けてね」
美希の顔が不安気に縦に小さく動いて、重厚なドアの向こうに消えた。
「……いいですか。彼女も……」
里井は奈々葉の肩に手を置く。
「はい、三名までは……」
と女性警官は深々と頭を下げた。
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アクリル板で仕切られた六畳ほどの面会室は、面会用にパイプ椅子が三脚並んだだけの殺風景な部屋だ。左手のドアが開く。制服の女性に伴われたジャージ姿の女性が現れた。
――美希……。
ハイという美希の声がして、ドアの方へ小さく頭を下げた。奈々葉と里井の目の前にあるパイプ椅子に腰を下ろす。全く化粧気のないその青白く痩けた顔を向け、深々と頭を下げる。
「美希……」「大丈夫か? 坂村……」
「奈々葉、私、あなたのご主人と……」
美希の目に涙が溢れる。
「美希、何か困っていることはない? 言ってね。必要なモノがあったら……」
「奈々葉、何で……何で怒らないの? 言ってよ。『美希、アンタのこと殺したいほど怨んでる』って……」
美希の手がアクリル板を押した。
「ホントのこと言うと、私、最初はショックで、ショックで自殺も考えたの。だけど、あの時、私も部長と……。だから、あなた……美希だけを責められない……」
奈々葉の頬に涙が伝う。
「……私、奈々葉と部長が羨ましくて……自棄になって……私、あんなにひどいことを……。ごめんなさい、ごめんなさい……」
美希がむせび泣く。
「美希……私、信じてるよ。ね?」
「…………なんで奈々葉、そんなに優しいの? 私、あなたをあんな目にしたんだよ」
「大切な……大切な親友だから……」
奈々葉はアクリル板に手のひらを当てた。美希の手のひらもそこに重なる。
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トントンと美希の側のドアが叩く音がした。
「そろそろ時間です……」
と、女性警官が促すように美希の背に手を当てる。
里井が自分の腕時計に目をやった。
美希は腰をかがめるように立ち上がる。丸めた小さな背中を押されるように左手にあるドアに歩を進める。
「美希、身体に気を付けてね」
美希の顔が不安気に縦に小さく動いて、重厚なドアの向こうに消えた。