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この香りで……。
第26章 提案
「部長、私……、離婚の届け、出して来ました」
 
 里井のマンションの玄関ホールに上がるとすぐに、奈々葉はそう言った。
 
「おう、お疲れさん。それで、お前、どうするんだ、これから?」
 
「え……それはこれから考えないと……、それまでここに……」
 
「……ああ。で、俺の提案だが……」
 
「ハイ…………」
 
「お前……俺……俺と……一緒になるっていう考えは……」と里井が小声で言ったあと「イヤ、宮崎、俺と一緒になってくれねえ?」と里井の目が菜々葉を真っ直ぐに見て言った。
 
「え…………? もう一度……言って……」
 
「奈々葉、俺と結婚してください」
 
 里井の姿が滲んだ。
 
「あ……………………えっ……あっ……ハイ、あっ……」
 
「アハハ、やったあ」
 
 ゆっくり身体が引き寄せられる。唇に里井の固い唇が重なる。胸が高鳴る。
 
「ん、ああ……やだ、部長、苦しい」
 
 ねっとりした里井の舌が、ゆっくりと奈々葉の舌に絡みつく。苦味のある唾液が混ざり合う。里井の舌が奈々葉の舌をしごく。溢れた泡立つ二人の唾液が喉元を滑る。こそばゆい感じをまた彼の舌が追う。
 
「んあ……」
 
 奈々葉は身体をよじる。
 
 リビングから聞こえる有線放送の音声に二人の吐息と布が擦れあう音が溶ける。熱い子宮から溢れた水がショーツに広がる。敏感な蕾が触れ、と言わんばかりに暴れだす。
 
 ワンピースの裾がフワリと浮かび上がった。冷たい空気が腿を冷ます。ショーツの上を里井の手のひらが這う。その上からピアノを奏でるように、彼の指先が陰唇を弾く。
 
 熱い子宮から水風船が破裂したように溢れ、クロッチに広がる。
 
「部長、ここで……はイヤ。お外……だれかに聞えちゃう」
 
「……だな。じゃあ、ベッドルームに行こうか」
 
 ――あ……。
 
 ワンピースの裾がフワリと奈々葉の膝を隠した。つま先が浮かび上がる。
 
 奈々葉はお姫様抱っこされていた。
 
 ――お姫様抱っこなんて……。
 
 慌てて、腕を里井の首に回す。
 
「あん、部長……、下ろしてください。私、すんごく重いですよお?」
 
 奈々葉はゆらゆらとお姫様抱っこでベッドルームに運ばれた。
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