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この香りで……。
第26章 提案

 数日後、弁護士の洋から電話がかかってきた。内容は、美希が釈放されるとのことだった。
 
「男が顧客情報を無許可に持ち出したんだと……」
 
「USBメモリにコピーしたそれを……ですか?」
 
「ああ、美希に……貢いでいたんだそうだ」
 
「……貢いでいた? なんで……?」
 
「ヤツは坂村のセフレで、本気で交際したかったんだ。しかし、メモリの中身を美希が知ったのは、警察に逮捕されてからで……。二人の話につじつまが合わねえってことで、調べたらそうだったらしいぞ」
 
 ――美希、私に相談してくれてたら……。

「じゃあ、二人とも……」

「いや、男は窃盗で起訴されたんだそうだ。けど、今回に限って、減刑か執行猶予になるんじゃねえかって」
 
 :
 
 美希が釈放されるということを、奈々葉は夫の信也に電話した。

『もしもし、宮崎……』

「あ、私、菜々葉…………信也さん、元気……?」

『あ、うん元気だよ……』

「信也さん……食事……ちゃんとしてる?」

『うん……コンビニ弁当だけどね……』

「コンビニ弁当……栄養摂らなきゃダメだよ……で、あのね……」

『……』

「美希が釈放されるって……」

『菜々葉……』

「うん、それだけ……」

その声はか細くなっていたが、声から伝わる誠実さは変わっていなかった。
 
 :
 
 その翌日の夜、洋から連絡があった。美希が釈放されたことと、信也らしき男性が迎えに来たことを……。
 
「美希は私に男のことを相談しようとして……」

 ――信也さんと……。

「ああ、そうかも知れねえな」
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