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この香りで……。
第12章 口紅
「きゃ……」
ねっとりとした感触が奈々葉の指先にあった。里井と自分の唾液だということは、すぐ分かった。
心臓が飛び出しそうだ。耳まで真っ赤になるのが分かった。
「……あとで、部長にも……ね?」
美希の目が里井の方へ流れた。
里井もバツの悪そうな表情で窓の方に目をやる。
「部長は顔、早く洗った方が……」
奈々葉は里井の顔に目をやる。彼の口元がピンク色に染まっている。
――わ、きゃっ、私の……口紅が……?!
里井の口元はピンク色に染まっていた。幼い子供が母親の口紅を悪戯したときのように……。