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この香りで……。
第16章 トラブルがあった夜
身体中が痛かった。久しぶりに運動した時のように体中の筋肉が悲鳴を上げているようだ。筋肉痛の理由は直ぐに分かったが、このような時、日頃の運動不足を痛感した。
「気合入れて早くしろ! おい、誰か、車手配してくれ……それと……」
「はい!」
事務所の中が騒がしい。奈々葉は里井の怒鳴るような声を久しぶりに耳にした。
「宮崎、今直ぐ出る準備!」
――え、私……?
「えっ……ああ、はいっ……」
「どうしたの……」と、奈々葉の横のまだ真新しいスーツの同僚の男性に呟いた。
『……○☓バンクのシステムが違法侵入されたそうです』
『ハッキング? ……でも、あるじゃない……ほら……セキュリティ……システム……』
『かからなかったそうです。だから……』
『内部の人間……?』
『まだ、可能性ですが……』
「部長……これ……」
美希が里井に車のキーを手渡す。
「すまん……お前らシステム部と連携を密に取れ!」
奈々葉は取るものも取り敢えず里井の後を追った。