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この香りで……。
第16章 トラブルがあった夜



 奈々葉は里井の左手を取る。ハンドルを持つ手が離れる。大きいがスラリと長く繊細な指……。ピアニストのような指に胸が高鳴る。

「ああ……宮崎……」

 里井の指は奈々葉の口腔にある。奈々葉自身が口に含んだのだ。長い指に舌を絡める。喉の奥を刺激されて溢れた唾液が里井の指に絡まる。

 ――私が部長を元気にしてあげたい。

 プーというトラックのクラクションに煽られる。里井の目がサイドミラーに動く。里井の手がギアをシフトレバーに動く。

「やだ、ダメ……」

 奈々葉の指がハザードランプのボタンを押した。

「見えるよ……」

「いいの……」

 奈々葉はカーステレオのボリュームを最大に回す。

「えっ……」

 奈々葉の手が里井の股間を捉えて、ゴリッとした肉の感触を確かめる。その唇は里井と重なっている。

 ――熱くて、固い……。

「部長……私たち…………いや、私が部長を守りますから……」

 奈々葉が里井のベルトを緩める。カチャカチャという鉄が当たる音が大音量の音楽に溶ける。

 チィ……。

 奈々葉の指が里井のジッパーを下げた。手のひらをその下の布に潜らせる。

 男性特有のムンと籠った匂いが奈々葉の鼻腔を刺激する。

 手探りで固い肉の塊を取り出す。奈々葉の唇は里井と重なったまま……。
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