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この香りで……。
第3章 マンション
奈々葉は足の踏み場もない廊下を奥に入り、右手にあるベッドルームのスイッチを点ける。
――部長……。
その部屋は他の部屋と違い、きれいに片付けられていた。「きれいに」と言うか、この部屋だけは生活感が感じられなかった。
ダブルのベッドに腰掛けさせ、コートとスーツを脱がせハンガーに掛ける。
「さ、宮崎……俺さあ……」
里井は首が落ちそうなぐらいに項垂れ、ポツリポツリと語りだした。今朝の同僚の姿を思い出す。
「ハイ……」
奈々葉は里井の顔を見た。