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この香りで……。
第22章 医院
「あの……ありがとう……ございました……」

 奈々葉は婦人に頭を下げた。婦人の顔が滲む。

「どこかお医者様に行ってね……傷……破傷風……恐いから……ね?」

「……はい……必ず……」

 ――でも、どこ行こう…………。ないよ、私、帰る場所なんて……。

 再び奈々葉は婦人に頭を下げた。彼女に背を向けて暗闇の方へ歩きだす。




「あ……そう……お姉ちゃん?」

 ――えっ……?

「家に……来ない? すぐそこなんだけど……」


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