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この香りで……。
第25章 警察署
「ああ……個人情報漏洩は信用問題だからな。後々の問題もかなり大きいぞ。ああ……、じゃあ後で……」
 
 里井がクローゼットからスーツを取り出す。
 
「宮崎、ちょっと警察に行ってくる。わりーけど、コーヒー淹れて保温してあっから……。」
 
 ランチョンマットが敷いてある褐色のダイニングテーブルの上には、白いコーヒーセットと、野菜サラダと二つのクロワッサンの載った赤く縁取られた楕円の白いランチプレートが向かい合わせに置いてある。
 
「美希……いえ……坂村さんに会いに……?」
 
「ああ、坂村の話もよく聞かねえと……。何があったのか。なぜなのか?」
 
「……なら、私も部長と一緒に行きます。美希に聞きたいことがあるの、私も……」
 
「いや、宮崎は家にいてくれ。なあ、分かるよな?」
 
 里井の無表情な目が奈々葉を見た。奈々葉は首を左右に振る。
 
「美希なんて放っておけばいいじゃない! 部長にとって私は何!?」
 
 里井の顔が涙で滲む。
 
「俺……。だけどお前も坂村も、俺の大切な部下だ!」
 
「部長は、私が部下だから私をここに置いてくれてるんですか? じゃあ、なんでキスなんてしてくれたの……」
 
「えっ、俺は……」
 
「なんで、お口で部長を愛することを拒絶してくれなかったの?」
 
 奈々葉の頬をポロポロと涙が滑った。
 
「宮崎……俺……」
 
「……ごめんなさい。私、分からないの。なんで、部長に怒っているんだろう。ごめんなさい。私……ごめんなさい」
 
 奈々葉は嗚咽を上げながら泣いた。
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