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この香りで……。
第25章 警察署
 いつもは閑散としたシステム情報部の前は雑然としていた。
 
 所々に☓☓県警察と印刷されたダンボールの箱が廊下のあちらこちらに散乱しており、それを山積みした台車を押して警察職員がエレベーターホールに向かっている。
 
「関係者の人ですか。ああ、今日はそちらには入れませんよ」
 
 屈強な装備をした警察官が里井に話しかける。
 
「ああ、その人たちはここの……。おお、里井ぃ、お疲れ。あのマスコミの奴ら、何か聞いてきたか?」
 
 里井に手を振りながら近づいて来たのは、人事部の青木という男で里井の同期だ。青木は関西出身のせいか声と身振り手振りが大きい。
 
 疑うように怪訝そう何か表情で見た警察官に里井は軽く頭を下げる。
 
「ああ、マイクを突きつけられたんで、ビシッと言ってやったよ」
 
「……里井、したんか? ケンカ……。おい、止めとけよ」と青木が奈々葉に目をやった。
 
「いえ、いえ」と奈々葉は自分の鼻の前で左右に手のひらをふる。
 
「俺はしねえつうの。負けるケンカはよお」と里井が周りを見渡しながら、

「……で、これは……?」
 
 里井がダンボールの山を指した。
 
「ああ、ちょっと前に坂村さんの弁護士から連絡があって、自分が自供し始めてるってな。彼女、なんや主犯や、て言うてるって。やから、その証拠探しやて……」
 
 青木がシステム情報部の出入口に張られた黄色い規制線テープを指差した。
 
「え……」
 
 ――美希が窃盗の主犯……?
 
 奈々葉は両手で顔を伏せる。
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