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第5章 手のひらで……

「ゴメン……」

「お兄ちゃん、なんで、謝るの？」

　夏芽が俺の背中から話しかける。

「いや……なんとなく……」と言う俺はくすぐったくて、腰をよじる。夏芽のその手はまだ俺の先っぽに擦り付けられている。

「夏芽に触られるだけで……って……ねえ？」

「私は嬉しいよ？　お兄ちゃんが気持ちよかったら……ね。それに……」

「えっ……？」

「ほら、もう……ね。ほら……」

　夏芽の手のひらが固くなった俺を包み込む。もう片方の手はシャワーでお湯をかけながら……。

　俺から飛び出した卵の白身のようなモノが次々と排水口へ吸い込まれてゆく。

「お兄ちゃん……？」

「えっ……？」

「キス……しよ？」

　夏芽が女の子の声で言った。その手はまだ俺を包んでいる。