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秘密のピアノレッスン
第2章 目覚め
「弾きたいもの……」
「何かない? 憧れてる曲とか」
憧れ。
あるにはあるけれど、今まで発表会の曲は全部母と佳苗先生が決めてきたから、自分でなんて決めたことがない。
「……あの」
「うん?」
小さな問いかけに、先生はペンを止めて顔を上げ、私をまっすぐに見た。
眼鏡の黒縁を指ですっと上げて、続きの言葉を待っている。
「あの、たとえば、憧れている曲があったとして……私がそれにしたいと言えば、それを弾くことになるんでしょうか……」
「……うん?」
「あ、あの」
首を傾げながら、先生はまたペンを回し、トンっとノートに置いた。
「弾きたいなら教えるよ。それが僕の仕事だし」
「わ、私に、弾けるのでしょうか……自分で決めた曲を……」
「まぁそれはレベルによるけど。滝沢さんぐらいだと、結構もう何でもいいんじゃない? コンクールでもない、内輪の発表会なんだし。去年は何弾いたの?」
「ドビュッシーの月の光を……」
「ロマン派が好きなの?」
「自分で決めたわけではなくて、母と角川先生が選んでくださって……」
「何かない? 憧れてる曲とか」
憧れ。
あるにはあるけれど、今まで発表会の曲は全部母と佳苗先生が決めてきたから、自分でなんて決めたことがない。
「……あの」
「うん?」
小さな問いかけに、先生はペンを止めて顔を上げ、私をまっすぐに見た。
眼鏡の黒縁を指ですっと上げて、続きの言葉を待っている。
「あの、たとえば、憧れている曲があったとして……私がそれにしたいと言えば、それを弾くことになるんでしょうか……」
「……うん?」
「あ、あの」
首を傾げながら、先生はまたペンを回し、トンっとノートに置いた。
「弾きたいなら教えるよ。それが僕の仕事だし」
「わ、私に、弾けるのでしょうか……自分で決めた曲を……」
「まぁそれはレベルによるけど。滝沢さんぐらいだと、結構もう何でもいいんじゃない? コンクールでもない、内輪の発表会なんだし。去年は何弾いたの?」
「ドビュッシーの月の光を……」
「ロマン派が好きなの?」
「自分で決めたわけではなくて、母と角川先生が選んでくださって……」