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秘密のピアノレッスン
第2章 目覚め
先生は、じっと私を見つめたあと、考え込むように、顎を触りながら立ち上がった。
作りつけられた無垢素材の棚から、使い込まれた楽譜が何冊か取り出される。

「滝沢さん。こっち来て、見ていいよ。今回は滝沢さんが選ぼう。もう18歳だし、自分で決めても」

広いテーブルにその楽譜をばさりと広げて、先生に手招きされた。
そう。もうすぐ18歳……。
12月の冬の日に18歳になる。

何冊も目を通していたら、リストの楽譜が目に入る。鉛筆でたくさんの指示が書き込まれていて、ぱらぱらとめくっていたら、折り癖のついたページが出てきた。

「これは……」
「愛の夢第三番?ロマンチックなのが好きなの?」

好きだけど、先生が弾き込んでいる形跡が気になった、というか……。
甘く美しい旋律はクラシックを知らない人にも有名な曲。

「気になるなら弾いてみようか」

先生は、シャツを少し捲って、ピアノの椅子に浅く腰かける。袖から見えている引き締まった腕と、シルバーの腕時計が素敵だ。
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