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秘密のピアノレッスン
第15章 グラス

玄関には母のブランドバッグはそのまま置かれていたが、レッスンバッグはなかった。
急いでリビングまで行くと、ガウンを着た母がグラスにお気に入りのスパークリングワインを注いでいる。
「帰ったのなら挨拶なさい」
白けた目で一瞥する母。
「た…ただいま帰りました。あの、バ、バッグは……」
「そこよ」
ソファの上を顎でしゃくられる。
中を確認すると、携帯を見られてはいないようで安堵したが、入っていたクッキーと手紙がない。
「……あ、あの、ママ。小さな袋、知らない?」
玄関に落としてはいなかったはずだが、レッスンバッグを抱えながら念のため確認した。
すると、母は一口ワインを飲み、今度はキッチンを顎でしゃくる。
「床に落ちてたわよ。いらないのかと思ったからゴミ箱の中よ。いるなら自分で管理なさい」
半ば呆然としながら、ゴミ箱の中から袋を取り出す。
レッスンバッグに入れた時に、せいぜい少し袋が潰れた程度だろうに、どうしてこれが、いらないものだと思えるのか。
どうして、そんなことができるのか。
どうして、普段あんなひどいことが言えるのか。
どうして、ママは……
普通じゃないの?
急いでリビングまで行くと、ガウンを着た母がグラスにお気に入りのスパークリングワインを注いでいる。
「帰ったのなら挨拶なさい」
白けた目で一瞥する母。
「た…ただいま帰りました。あの、バ、バッグは……」
「そこよ」
ソファの上を顎でしゃくられる。
中を確認すると、携帯を見られてはいないようで安堵したが、入っていたクッキーと手紙がない。
「……あ、あの、ママ。小さな袋、知らない?」
玄関に落としてはいなかったはずだが、レッスンバッグを抱えながら念のため確認した。
すると、母は一口ワインを飲み、今度はキッチンを顎でしゃくる。
「床に落ちてたわよ。いらないのかと思ったからゴミ箱の中よ。いるなら自分で管理なさい」
半ば呆然としながら、ゴミ箱の中から袋を取り出す。
レッスンバッグに入れた時に、せいぜい少し袋が潰れた程度だろうに、どうしてこれが、いらないものだと思えるのか。
どうして、そんなことができるのか。
どうして、普段あんなひどいことが言えるのか。
どうして、ママは……
普通じゃないの?

