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秘密のピアノレッスン
第16章 呪縛から

先生はそれ以上、言葉を続けなかった。
沈黙が流れて、車の中でただ見つめ合う。
ガーゼを止めたテープの上を、そうっと、先生の指がかすめた。
「……来るか」
優しい声に頷き、優しい唇で息を塞がれる。
先生の柔らかな唇がふわりと下唇を食み、二人で熱い舌を絡め合わせた。熱を持ち始めた眼差しで、先生が言う。
「……家に必要なものを取りに行こう。お母さんがいたら、俺も話をさせていただくよ」
母がいたら怖い。
怖いけど……。
ちゅる、と首筋に先生の舌が這った。
「あ、っ……」
「明日の事は明日考えよう。今夜は……一緒にいよう。君が安心できるまで、一緒にいる」
先生の長い指が、膝の上でつくっていた私の拳を包む。
大事にされると、涙が止まらない。
先生と二人で家に戻ったが、なにひとつ案ずる心配はなかった。
母は全く戻って来てはいなかったし、ワインはこぼれてグラスは床に転がったままだった。
必要なもの。
制服、鞄。学校の用意。ゆいちゃんの手紙とクッキー。
あとは、父の連絡先もあればと思ったけれど、それはどこにもなかった。
沈黙が流れて、車の中でただ見つめ合う。
ガーゼを止めたテープの上を、そうっと、先生の指がかすめた。
「……来るか」
優しい声に頷き、優しい唇で息を塞がれる。
先生の柔らかな唇がふわりと下唇を食み、二人で熱い舌を絡め合わせた。熱を持ち始めた眼差しで、先生が言う。
「……家に必要なものを取りに行こう。お母さんがいたら、俺も話をさせていただくよ」
母がいたら怖い。
怖いけど……。
ちゅる、と首筋に先生の舌が這った。
「あ、っ……」
「明日の事は明日考えよう。今夜は……一緒にいよう。君が安心できるまで、一緒にいる」
先生の長い指が、膝の上でつくっていた私の拳を包む。
大事にされると、涙が止まらない。
先生と二人で家に戻ったが、なにひとつ案ずる心配はなかった。
母は全く戻って来てはいなかったし、ワインはこぼれてグラスは床に転がったままだった。
必要なもの。
制服、鞄。学校の用意。ゆいちゃんの手紙とクッキー。
あとは、父の連絡先もあればと思ったけれど、それはどこにもなかった。

