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秘密のピアノレッスン
第16章 呪縛から

先生はただ私の髪を撫で、はらりと耳から落ちる毛束があれば、それをすくう。
覚束ない手や舌では、絶頂に導くにはまだ経験も足らず、うまくはいかない。
懸命に愛撫を続けたあと、口からちゅぷりと先生を離して見上げた。
先生は、長い睫毛を伏せて慈しむような瞳を私に向ける。そして、頭を包み込むようにして優しく撫でた。
大きな手に撫でられていると、昔、頭を父に撫でられたことを思い出す。
父はこんなに美しい男性ではないし、手ももっとごつごつしていただろう。
その記憶も最近じゃあやふやで、家族を思い出そうとすると、冷たい瞳をした、鬼のような母が出てくる。酒と香水の匂いをさせ、私のことなど見向きもしない、母の姿が。
「……更紗?」
先生が私の頬を手の甲で拭った。濡れた感覚。
それで、自分が泣いていたことを知る。
「ごめ……ごめんなさい、……」
「傷が痛む?気持ちよくしてくれてありがとう。おいで。ここに」
先生はボクサーパンツを穿き直し、自分の膝を指差した。導かれるままに体を寄せると、先生の膝に乗せられ正面から抱きしめられた。
「無理しないでいいのに、ばかだな」
愛しい人の大きな手が頭を包む。ぬくもりがじんわりと伝わり、胸まで温かくさせる。
覚束ない手や舌では、絶頂に導くにはまだ経験も足らず、うまくはいかない。
懸命に愛撫を続けたあと、口からちゅぷりと先生を離して見上げた。
先生は、長い睫毛を伏せて慈しむような瞳を私に向ける。そして、頭を包み込むようにして優しく撫でた。
大きな手に撫でられていると、昔、頭を父に撫でられたことを思い出す。
父はこんなに美しい男性ではないし、手ももっとごつごつしていただろう。
その記憶も最近じゃあやふやで、家族を思い出そうとすると、冷たい瞳をした、鬼のような母が出てくる。酒と香水の匂いをさせ、私のことなど見向きもしない、母の姿が。
「……更紗?」
先生が私の頬を手の甲で拭った。濡れた感覚。
それで、自分が泣いていたことを知る。
「ごめ……ごめんなさい、……」
「傷が痛む?気持ちよくしてくれてありがとう。おいで。ここに」
先生はボクサーパンツを穿き直し、自分の膝を指差した。導かれるままに体を寄せると、先生の膝に乗せられ正面から抱きしめられた。
「無理しないでいいのに、ばかだな」
愛しい人の大きな手が頭を包む。ぬくもりがじんわりと伝わり、胸まで温かくさせる。

