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秘密のピアノレッスン
第17章 本当の私
「俺も……一緒にいられたらって思うけど……今は、ね」

私の膝の上で、先生の長い指先が絡む。その愛しい指先をぎゅっと握り返し、手の甲を頬に当てた。

これだけしてもらっているのに、これだけ想ってもらえてるのに、まだ先生が足りないなんて。
こんなに困らせてるのにまだ、優しい声で、柔らかい手つきで撫でてくれるなんて。
先生の手を取って形よく長い指にキスをする。ちゅ……と音が立つと、先生の瞳が困ったように細められる。

車が、先生のマンションの駐車場に着いた。
佳苗先生のおうちに行くんじゃないの?
それとも先生、忘れ物したのかな?
いろいろ考えながら、先生の家へ入る。

「……蒼馬さん、忘れ物?」
「忘れ物というか……」

靴を揃える間もなく手首を引かれておどおどとついていく。
先生は寝室のドアノブを開け、ベッドに私を導いた。
まだ二人で眠ったシーツと毛布がそのままの形で残っている。昨日、先生が私を優しく包むようにそばにいてくれた痕跡が。

しばらく、二人きりではいられないかもしれない。場合によっては、先生と会えないことだってあるかもしれない。これから、今までの生活が全て崩れることもあるかもしれない。
この先のことは、先生のほうが明確に見えているのかもしれない。

「……好きだよ」

先生は私を後ろから抱き締めて、私の耳元に思いを刻みつけるように囁いた。
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