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秘密のピアノレッスン
第19章 鳥籠
「……あ、来たよ!」
忘れもしない青い車が駐車場に着いた。長身の男の人が出てくる。
ゆるく目に掛かる髪。変わらない奏馬さんの姿。
「更紗!」
私を呼ぶ声。私を見つめる漆黒の瞳。全て、何も変わらない。
私は奏馬さんに駆け寄る足を止めて、レッスンバッグの中を覗いた。そして、ふわふわのくまのキーホルダー小さな手に託す。
「ゆいちゃん、ありがとう。これは、ゆいちゃんにプレゼントするよ」
「いいの?おねえちゃん、ありがとーっ」
心の支えだったそのくまが、今度はゆいちゃんの笑顔を守ってくれますように。
奏馬さんは私を助手席に乗せてドアを閉め、息子先生に手を振って、すばやく発進させた。
先生が……奏馬さんがいる。
急展開に頭が追いつかない。
けれど、隣に奏馬さんがいる。その喜びはもう、自分を抑えられるものではなかった。
泣きたくもないのに涙が出る。やっと会えた喜びで、おかしくなりそうだ。
「ごめんね。なかなか迎えに来れなくて。こっちもいろいろとあって、仕事の整理もして。母さんのレッスンの手伝いは辞めされられたよ」
ぽろぽろと涙が落ちる。奏馬さんはくすりと笑って、涙を指先で拭ってくれた。
「奏馬さん……会いたかった……っ」
何度美しい指で涙を拭われても、零れる涙。
笑顔でいたいのに、やっと会えて嬉しいのに、涙が邪魔をする。
「泣き虫だな」
と言って笑う奏馬さんの瞳は、今まで見た中で一番優しいものだった。
忘れもしない青い車が駐車場に着いた。長身の男の人が出てくる。
ゆるく目に掛かる髪。変わらない奏馬さんの姿。
「更紗!」
私を呼ぶ声。私を見つめる漆黒の瞳。全て、何も変わらない。
私は奏馬さんに駆け寄る足を止めて、レッスンバッグの中を覗いた。そして、ふわふわのくまのキーホルダー小さな手に託す。
「ゆいちゃん、ありがとう。これは、ゆいちゃんにプレゼントするよ」
「いいの?おねえちゃん、ありがとーっ」
心の支えだったそのくまが、今度はゆいちゃんの笑顔を守ってくれますように。
奏馬さんは私を助手席に乗せてドアを閉め、息子先生に手を振って、すばやく発進させた。
先生が……奏馬さんがいる。
急展開に頭が追いつかない。
けれど、隣に奏馬さんがいる。その喜びはもう、自分を抑えられるものではなかった。
泣きたくもないのに涙が出る。やっと会えた喜びで、おかしくなりそうだ。
「ごめんね。なかなか迎えに来れなくて。こっちもいろいろとあって、仕事の整理もして。母さんのレッスンの手伝いは辞めされられたよ」
ぽろぽろと涙が落ちる。奏馬さんはくすりと笑って、涙を指先で拭ってくれた。
「奏馬さん……会いたかった……っ」
何度美しい指で涙を拭われても、零れる涙。
笑顔でいたいのに、やっと会えて嬉しいのに、涙が邪魔をする。
「泣き虫だな」
と言って笑う奏馬さんの瞳は、今まで見た中で一番優しいものだった。