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秘密のピアノレッスン
第4章 淡い思い
ケーキの箱を開けてみたら、カスタードクリームたっぷりの繊細なパイが三つ入っていた。
いつも、ピアノを弾いて帰るだけのこの空間。
キッチンではお湯が湧き、白いお皿にはおいしそうなパイがあって、先生が淹れてくれたコーヒーから、あたたかな湯気が立ち上っている。
いただきます、と顔の前で手を揃えたら、先生も同じようにしていて、笑いあった。
一口、銀色のフォークでパイを刺すと、脆く崩れてしまう。
先生のお皿の上でも同じ現象が起きていて、二人で笑った。
「このパイ、繊細すぎるなぁ……」
「……手でいっちゃってもいいでしょうか」
「僕もそうする。行儀は気にしないで、楽しく食べよう」
くすくす笑い合いながら、手づかみでパイを食べた。
垂れ落ちそうなカスタードを指ですくって、舐めて、とてもお行儀が悪い。母が見ていたらひどく叱るだろうけれど。
でも、先生の指先。
すごく美しい手をしている先生の指先で、繊細なお菓子を扱う仕草は、無意識に見とれてしまった。
「……何ですか」
さすがに先生も、私に凝視されていることに気付いたようだ。少し唇を尖らせていて、可愛らしい。
いつも、ピアノを弾いて帰るだけのこの空間。
キッチンではお湯が湧き、白いお皿にはおいしそうなパイがあって、先生が淹れてくれたコーヒーから、あたたかな湯気が立ち上っている。
いただきます、と顔の前で手を揃えたら、先生も同じようにしていて、笑いあった。
一口、銀色のフォークでパイを刺すと、脆く崩れてしまう。
先生のお皿の上でも同じ現象が起きていて、二人で笑った。
「このパイ、繊細すぎるなぁ……」
「……手でいっちゃってもいいでしょうか」
「僕もそうする。行儀は気にしないで、楽しく食べよう」
くすくす笑い合いながら、手づかみでパイを食べた。
垂れ落ちそうなカスタードを指ですくって、舐めて、とてもお行儀が悪い。母が見ていたらひどく叱るだろうけれど。
でも、先生の指先。
すごく美しい手をしている先生の指先で、繊細なお菓子を扱う仕草は、無意識に見とれてしまった。
「……何ですか」
さすがに先生も、私に凝視されていることに気付いたようだ。少し唇を尖らせていて、可愛らしい。