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秘密のピアノレッスン
第7章 雨
「ありがとうございました」と、女の人が先生に礼をする。

綺麗に見える角度を知り尽くしているような仕草に、胸がもやりとする。

「あ、立花さん。さっきありがとうございました」
「ふふ。いつものお礼です。お口に合えばいいのですが……」

最後はそんな会話が交わされ、タチバナさんは艶のある、ゆるい栗色のウェーブヘアを軽く揺らしてお辞儀をし、部屋を出て行った。

お礼……って?

すれ違いざまに、立花さんは私を舐めるように見て、にこりと微笑んだ。
先生と釣り合いそうな大人の女の人だ。


先生が、他の女の人と仲良くしているのは嫌だな。
私の知らない先生を見るのは……。

もやもやと考えながら、自分の手を擦り合わせる。
冷たい外気で手が冷えてしまっていたから、リビングに置いてある小さなファンヒーターの前で両手をかざした。

タチバナさんが玄関のドアを開けて出て行ったのを確認してから、先生がテーブルを指差した。

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