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秘密のピアノレッスン
第7章 雨
「更紗ちゃん。今日はケーキがあるよ」
「え……?」
「さっきの立花さん。お菓子作るの趣味なんだって。一緒に食べてくれると助かる」
「……いいですよ?」

ヤキモチみたいなものが邪魔して、可愛く答えられなかった……。

先生はくすくす笑って、ファンヒーターにかざしていた私の左手をぎゅっと握った。

ひゃ……

心の中で叫んだけど、先生は手の温度を確かめているだけだ。


「相当冷えてるよね。いつもこんなに冷たいの?」
「冬は……カイロも持ってるんですけど……」

白いコートのポケットに右手を入れて探って、左手は先生に握られて。
先生の手は暖かくて、ちょっと恥ずかしい。

「お湯に浸してみるとか?足湯みたいにして」

先生も一緒になって、温める方法を考えてくれていて。
さっきの立花さんに対するヤキモチは、ちょっとずつ消えていった。

指は冷たくても、今度は顔が火照ってしまって、ずっと俯いていた。
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