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秘密のピアノレッスン
第7章 雨
レッスンが終わり、待ち兼ねたケーキの時間がやってきた。
先生がコーヒーを淹れてくれている間に、私がケーキのセッティングをする。

「先生……。立花さんは、先生のために作ったのに、私も一緒に食べてたら嫌じゃないでしょうか?」

「大丈夫でしょう。おいしく食べてるんだから」

女心がわかってないなぁ……。
それも先生らしいんだけど、私が同じことされたら嫌かも。でも、あんまり突っ込んでは言えない。

ビターで、スクエア型のチョコケーキ。
大人のほろ苦さは、先生を想って作られたことは私にもわかる。

先生は、繊細な作りの銀色のフォークで、ケーキを口に運ぶ。
食べている姿は美しく、艶めかしくて……。
時折片手で眼鏡を上げるのを見つめていたら、先生の口角が上がった。

「僕だって、誰にでも誘ったりしないよ。心配しないで、食べなさい」

「はい……」

と答えたものの、どう言う意味だろう……?
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