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秘密のピアノレッスン
第7章 雨
先生の指……。
爪の形までも美しい。
もう、先週のような、あんなバカなお願いはしないと思ったのに。
先生は、何もなかったようにふるまってくれているのに……。
帰るのが名残惜しく思えてしまって、コートを着られない。
時計はまだ、19時過ぎ。
先生は、大きな窓から外を眺めている。
「雨だね」
「今日は一日雨みたいです。ときどき雪になってました」
「そうか。大変だ」
先生の隣に並んで、降りしきっている冷たい雨をただ眺めてみる。
「ショパンの雨だれは弾いたことある?」
「あります、中学生のころに……」
「僕、好きなんだ」
先生が好きだとは……。
華やかではないこの曲。まるで自分のようで、あまり好きではなかったけれど……。
「帰って練習してみます……また、聞いてもらえますか?」
「いいよ。楽しみだけど、お説教になったらごめんね」
「えっ……」
先生のレッスンは、厳しいけど嫌いじゃない。
ふふっと笑ったら、先生は眼鏡を上げながら、じいと顔を覗き込んできた。
爪の形までも美しい。
もう、先週のような、あんなバカなお願いはしないと思ったのに。
先生は、何もなかったようにふるまってくれているのに……。
帰るのが名残惜しく思えてしまって、コートを着られない。
時計はまだ、19時過ぎ。
先生は、大きな窓から外を眺めている。
「雨だね」
「今日は一日雨みたいです。ときどき雪になってました」
「そうか。大変だ」
先生の隣に並んで、降りしきっている冷たい雨をただ眺めてみる。
「ショパンの雨だれは弾いたことある?」
「あります、中学生のころに……」
「僕、好きなんだ」
先生が好きだとは……。
華やかではないこの曲。まるで自分のようで、あまり好きではなかったけれど……。
「帰って練習してみます……また、聞いてもらえますか?」
「いいよ。楽しみだけど、お説教になったらごめんね」
「えっ……」
先生のレッスンは、厳しいけど嫌いじゃない。
ふふっと笑ったら、先生は眼鏡を上げながら、じいと顔を覗き込んできた。