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秘密のピアノレッスン
第10章 18歳
夜が明けた。寒波のせいで風は冷たいが、清々しいほどの晴天。
母には、学校があると嘘をついてしまったから、制服にコートを着て家を出た。
誰にも見つからないように走って、先生のマンションへと急ぐ。

エントランスにつき、いつものように呼び出しボタンを押した。
時間はまだ朝の9時。
先生から「時間はいつでもいいよ」と言われていたけれど、早すぎたかもしれない……。

「……はい」
「朝早くすみません、滝本です」
「開けるよ」

すぐに扉が開いた。先生の声、具合が悪そうだったけど……。
息を切らし、19階の角部屋のドアの前に立ち止まると、先生が玄関のドアを開けて迎えてくれた。
先生は、普段の服装ではなく、ジャージを着ていた。

「あ、制服……?」

先生が私の服装に目をとめた。

「学校があるって母に言って出てきたので……」
「ああ、そうか。……嘘つかせちゃったね」

先生は申し訳なさそうに言うけれど、嘘をつかないと会えないから。

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