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秘密のピアノレッスン
第10章 18歳
先生の寝室は玄関入ってすぐ右側の部屋らしい。
数センチだけ開いているドアの隙間から中を覗く。

その部屋にはダブルサイズのベッドだけが置いてあり、ベッド周りのリネンはすべてグレー系で纏めている。窓にはブルーグレーのロールスクリーンが掛けられていた。

先生は、ベッドの真ん中で足を投げ出してうつぶせになっていた。
顔は見えない。

「先生……入ります……」

制服は脱いだが、白の三つ折りソックスははいたままで冷たい床を歩く。そうっとベッドまで近づき、向こう側を向いた先生の顔を確かめようと、膝をベッドにぎしりと乗せた。

この体勢じゃ顔は見えないけれど、寝息が聞こえる。
やっぱり眠かったんだな。

ふふっと笑みがこぼれそうになるのを我慢して、先生が下敷きにしているホワイトグレーの毛布を引っ張り、掛けてあげた。

しかし、全然起きる気配はない。
すうすうと寝息を立てるたびに、背中が動いている。

先生は、今日の時間を作るためにお仕事してたんだよね。
自分で言うのはすごくおこがましいけれど、私のために……。

掛けた毛布をそっとつまんでぴらりと開けた。
私も、一緒に……寝るって言ったし……。

少しだけ、先生の温もりを感じたい。
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