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秘密のピアノレッスン
第10章 18歳
知らず知らず、しょんぼりしていたのか、先生が頭を撫でてくれる。

「ドライブに行きたかった?」
「あ、えっと……はい……」
「今日の予定を言ってなかった僕が悪かったね。また、いつでも連れていくよ。更紗ちゃんが行きたい時に」

いつでも……?
先生の言葉で、一瞬にして元気になった。

それって、恋人みたいで、胸がくすぐったくて嬉しい……。


オーダーしたケータリングはすぐに来た。そのお店は、佳苗先生もよく利用しているらしく、先生は玄関で配達の人とも気さくに話していた。
先生は手際よく用意をしてくれて、私はパーカー姿で、出番もなくちんまりと座っていた。

アミューズに、オードブルからメインまで、広いテーブルに美しく彩られたごちそうが広がる。
パパのおばあちゃまのおうちみたい。

「わあ……」
「さあ、食べようか」
「はい」

先生がお気に入りだけのことはあって、どれもこれもおいしい。
そして、先生の食事の所作はとても美しく、見とれてしまった。

「……何ですか」

先生はまた、私の凝視に気付いて、バツが悪そうな顔をする。前にもあったシーンにくすくすと笑った。

パイを食べる先生の手が美しくて、見とれてしまった時を思い出す。
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