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どうか、その声をもう一度
第6章 崩れたオペラ

抱き起され、隆也の身体にしがみつく。冬物の衣類を何枚も隔てて抱き合うと下半身が繋がっているのがなんだか滑稽に思えた。顎を掴まれ、キスが降ってくる。無理やり身体を抉じ開けているくせに優しいキス。頬の生ぬるさで自分が涙していることに気付いた。

「やらしい顔、やらしい身体。聞こえる?もう、ぐちゃぐちゃになってやらしい音を奏でてる」

言いながら隆也がニットのワンピースをたくし上げ、腰を突き動かした。結合部からあがる鈍い音。彼の言葉通り、ぐちゃぐちゃととても卑猥な音だった。羞恥で顔が熱くなる。目をそらして、かぶりをふればそれを咎めるように隆也の指がぎゅっとクリトリスを強くつまんだ。

「っ……」
「我慢しなくたっていいのに。まあ、家に帰ったらもっとたくさんイかせてあげるよ」

達しそうになったのを堪えたのはバレているらしい。私の行動が彼をこの異常な行為に走らせているのだろう。元々性的な欲求が旺盛だったような気もしているが、まるで躾のような、はたまた儀式のようなセックスを繰り返すことになったのは私が一度は彼の元から離れようとした所為だ。

「今日は吊ろうか。それとも、蝋がいいかな」

にこりと笑って言われても恐ろしいだけだ。ぼろぼろと涙を溢しながらかぶりを振って、嫌だと訴えた。

「嫌なの?でも、身体は期待してるみたいだ。今、すごく締まったよ」

そんなに早く帰りたいんだね、と言うと私の身体を再びシートに横たえる。腰を押さえつけ、がつがつと打ち付けながら、彼はしつこく私の名前を呼んだ。恍惚に歪む隆也の顔。目を閉じれば、瞼の裏にはあの離島の夏の光景が甦る。秀治。秀治。あなたは、私の希望だ。叶うことなら、あの夏に戻りたい。

「出すよ」

戸惑いながら私に触れた秀治の指の感触や、彼の声、彼の顔を思いだしていると、隆也の声で急速に現実に引き戻された。あ、と思ったその時には彼の欲の残滓は私の身体の中に流れ込んでいた。

射精が治まると、起き上がる気力もない私をそのままに彼は自分の衣類を直し後部座席から出ていく。せめて出された精液だけでもふき取ろうと思ったものの、たまらなく億劫だった。どうせ家に帰ればまたどろどろになるのだ。もう、なんだっていい。
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