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キズナツナグモノガタリ ~誠の男と性の少女~
第1章 『蘇った者』
「それは、絆があったからだ」
「…絆?」
「そう絆だ。自身が傷付き倒れても隣人を思いやる気持ち。遠く離れた見知らぬ誰かを案じる気持ち。誰かが誰かを思う。そこに生まれる精神的な繋がり。それを『絆』と呼ぶ」

 近藤の言葉には妙な説得力がある。数々の死線を仲間と共に生き抜いた空こその説得力だろうか。
 しかし確かに、特に東日本大震災の時は本当に世界中が日本に救いの手を差し伸べてくれた。アメリカの『トモダチ・オペレーション』というコードネームに俺は何だか涙が出そうになったのを思い出した。

 自分が傷付き倒れても、誰かを思いやる気持ち…

 俺は肩を並べるように隣に座る花楓の体温を探す。小さな、目の前の男と比べてすごく小さな体がそこにある。

「しかし…苦難を乗り越え平和になればその絆はあっさりと失われた。今ではもうすでに過去のものとして扱われ、人を思いやる気持ちも失われた。結局は何かの困難に際してのみにしか絆を思い出せない、そんな時代になってしまったのだ」

 俺に触れる肩がびくっと震えた。

「ま、まさか…あんた、そのために…?」
「ふむ、気付いたか。そうだ」

 凄みのある声。月をも震わせそうな声。

「儂が厄災となる。そしてこの時代に絆を取り戻す」

 辻斬りの正体、新選組局長、近藤勇…
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