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キズナツナグモノガタリ ~誠の男と性の少女~
第3章 卑劣! 武田観柳斎!!
「俺はな、大政奉還の後、近藤先生と袂を分かった。最後まで共に戦うことはしなかった」

 当時の思い出を語るその顔は、先程までのやや情けないキャラとは違い、凛と引き締まっている。一説では新選組最強とも言われる剣客の、その一端を窺わせた。

「今度は最後まで共に戦いたかった。現世に近藤先生の気配を感じ、馳せ参じたのだ。しかし、まさか俺が着くよりも早く倒され、そして俺自身は溜息をつかれるとは…」

 最後の方はまたしょんぼり。感情表現が豊かな人らしい。

「だってさ、永倉はジジイじゃん」

 俺の一言が止めとなったか、永倉がうぐっと息を詰まらせた。

 そう、俺達の目の前に立つ永倉新八はおじいちゃんだった。
 永倉新八は七十五歳まで生きたらしい。晩年まで剣の稽古や指導は続けていたそうだが、稽古中に体を痛めて馬車に乗せられ学生に助けられながら帰宅したという。

 今、目の前にいるのはそんな永倉だ。さすがにちょっと緊張感に欠ける。

「仕方がないだろう。俺は長生きしたんだ。近藤先生のように血気盛んな頃に死んだのではないのだから。
 本当なら近藤先生と酒を酌み交わしたかった。この時代の酒や食い物のなんと美味いことか。しかし俺だけ老いさばらえ、しかも近藤先生もすでにいないとは…」

 くっと唇を噛む永倉。

 なるほど、確かに新選組とは袂を分かったとはいえ、そこには確かな繋がりがあったようだ。これも近藤の言う『絆』なのだろう。

「かくなる上は、近藤先生の弔い合戦を挑むのみ。少年、小次郎と言ったか。手合わせ願おう」
「…分かった」

 俺が応じると永倉は満足そうに頷き、そして見事な動作で刀を抜いた。老いたりとはいえ一流の剣客の凄みを感じさせる動きだった。

「花楓、やるぞ」
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