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キズナツナグモノガタリ ~誠の男と性の少女~
第1章 『蘇った者』
 確かに沙川の術を使えば深夜に日本刀を携えて外を歩いていても捕まることはまずないだろう。
 影から影、暗がりから暗がりへと音もなく俺と花楓は渡り歩く。

 忍術とは魔術や妖術の類のものじゃない。心の裏を突くのが忍の術だ。相手の意識の外に身を置くことが出来れば突然目の前に現れたりするように見せることも、誰にも見つからずに移動することも、そう難しくはない。

 しかし、だからといって。

 何で俺達が辻斬りの退治などしなけらばならないのか。

 俺はまだそんなことを考えていた。今日は月曜日、そして今は冬休み。明日の学校の心配もなく伊集院光の深夜ラジオを聞けるというのに。
 ちらりと横に目を送れば暗がりの中にいるせいで表情こそ見えないものの、花楓の硬い決意の気配を読み取ることが出来た。

 …仕方ない。花楓を一人で行かせるわけにもいかないし。

 花楓は小太刀という、普通の刀よりは短く脇差よりはやや長い刀を腰に帯びている。剣捌きは上手でも男を相手にすると力で負けてしまう。小太刀は短い分攻撃には転じにくいものの小回りが利く分守りには優れる。そして花楓の巧さと速さを十分に活かすことが出来る。
 その腕はさすがに師範代。並みの大人じゃ相手にならない。

 とはいえ、俺も花楓も真剣での戦いの経験はない。それでも花楓は行く気満々だ。花楓の腕なら心配はないと思うけど、万が一ということもある。一人で行かせられない。
 それに沙川古流道場が潰れてしまえば、俺達は剣を学ぶところがなくなってしまう。
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