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臥龍の珠
第2章 梁父の吟
 結婚し、五年の月日が流れた。二人の間に未だ子供は産まれず、夫婦と均の三人で変わらない日々を送っていた。元々物作りが好きな珠は農作業にもすぐに慣れ、どうすればより良い収穫が可能になるか、兄弟と共に研究に余念がなかった。

 里の者は、結婚後すぐに亮が荊州を支配する劉表に仕えるものとばかり思っていた。なぜなら亮の叔父諸葛玄は生前劉表の麾下だった。さらに義父黄承彦の妻は劉表の妻と姉妹であり、劉表側近の蔡瑁は妻の兄弟という、近い関係にあるからだ。劉表とのさらなる繋がりを得るために黄承彦の娘を娶ったと考えるのは当然だった。

 だが徐庶など亮に親しく世情に明るい人物は、亮が劉表に仕えることはないと踏んでいた。劉表は荊州をよく治めており、劉表自身も儒学を学んだ英傑だ。しかしそれでも荊州を飛び出し中原に覇を唱えるには、劉表はいささか物足りない人物であると皆知っていた。自身自身で曹操に対峙せず、客分でしかない劉備に兵を与えて丸投げしていることがその事実を雄弁に物語っている。亮ほどの才を持つ人間に劉表はいかにも不足であった。
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