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臥龍の珠
第2章 梁父の吟
「復讐したいなら、自分一人でやればいい。ですが彼は部下の兵士に無辜(むこ)の民を殺すよう命じました。曹操の一時の激情で殺された民、何の恨みもない民を殺さねばならなかった兵士の心を思うと、私は曹操に仕官する気にはどうしてもなれないのです」

 優しすぎると、徐庶は思った。徐庶はどちらかというと性格的に曹操寄りの人間だった。怒りに任せて人を殺したこともある。だから父親ための復讐に走った曹操の気持ちも理解できた。亮は親しい友人とはいえ、相容れない部分だってもちろんあるのだ。

「あなたが彼に仕えることは止めません。好き嫌いを別にすれば、曹操は有能な武将です。この先あなたが彼の下で存分に力を発揮することを祈ります」
「ありがとう」

 話は終わったはずだった。しかし徐庶はなぜか離席を躊躇う様子を見せた。

「まだ他に何か?」

 亮には話の内容が予想できた。なぜ続きを躊躇うのかもわかっていた。徐庶は肚を決めた様子で言葉を継いだ。
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