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臥龍の珠
第2章 梁父の吟
「君もいつまでもこのままでいるわけにもいくまい。妻もいるし、これからは子供だって生まれるだろう。そろそろ雲を掴んでもいい頃だ。だから僕が襄陽を立ち去る前に、君を紹介しておこうと思う」
「……左将軍ですか」
「やはりわかるか」
「曹操でないならば、彼しかいないでしょう」
「まあな」
「あなたに巻き込まれたようで釈然としませんが、もし彼がここまで来れば、会うだけは会いましょう。わざわざこのような山奥の草廬に来ればの話ですが」
徐庶の話はやはり亮の予想した通りだった。左将軍とは、劉表の客将である劉備のことだ。現在劉備は劉表の要請で曹操に対抗するため荊州北部の新野に駐軍している。劉備は曹操に対抗できる実力を備えた、数少ない武将なのだ。そして彼に仕えるかどうかはともかく、いつまでも晴耕雨読のままでいるわけいもいかないというのも、徐庶のいう通りだった。
「紹介はするが、左将軍に仕えるも仕えないも君に任せる。そしていつかまた会おう。世が落ち着いて、のんびり暮らせるようになったなら」
「そうなればいいですね。この庵はその時のために、残しておきますよ」
「さらばだ、孔明」
徐庶は名残惜しげに何度も振り返りながら、庵を後にした。
亮の運命の歯車が、ゆっくりと回り始めた。
「……左将軍ですか」
「やはりわかるか」
「曹操でないならば、彼しかいないでしょう」
「まあな」
「あなたに巻き込まれたようで釈然としませんが、もし彼がここまで来れば、会うだけは会いましょう。わざわざこのような山奥の草廬に来ればの話ですが」
徐庶の話はやはり亮の予想した通りだった。左将軍とは、劉表の客将である劉備のことだ。現在劉備は劉表の要請で曹操に対抗するため荊州北部の新野に駐軍している。劉備は曹操に対抗できる実力を備えた、数少ない武将なのだ。そして彼に仕えるかどうかはともかく、いつまでも晴耕雨読のままでいるわけいもいかないというのも、徐庶のいう通りだった。
「紹介はするが、左将軍に仕えるも仕えないも君に任せる。そしていつかまた会おう。世が落ち着いて、のんびり暮らせるようになったなら」
「そうなればいいですね。この庵はその時のために、残しておきますよ」
「さらばだ、孔明」
徐庶は名残惜しげに何度も振り返りながら、庵を後にした。
亮の運命の歯車が、ゆっくりと回り始めた。