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臥龍の珠
第1章 青の婚礼
小さな蝋燭が室内に張り巡らされた青い帳を仄かに照らしている。その青色は、昏く重い。
本来、婚礼とは忌むべき物とされてきた。子が妻を娶るということは、親が年老いるということでもあるからだ。また、日没後の昏い時刻に婚礼を行うのは「陽」である男性が「陰」である女性を迎えるためだった。婚礼の「婚」に「昏」が含まれているのはそのことに由来している。そして「陰」を迎えるということから馬車も衣装も黒と決められていた。しかし時代が進むにつれて婚礼を祝い事とみなす習慣が生まれ、衣装も黒からより明るい青い物へと変化を遂げていった。
「私は諸葛亮。字(あざな)は孔明です。今日からあなたの夫となります」
落ち着いた静かな声とともに顔を覆う布がそっと取り去られた。そこで珠はようやく夫となる男性の顔を見ることができた。
――水のような人。
感じたのは、静かな冷たさ。夫となる亮は澄んだ泉のような透明な気を漂わせていた。珠と同様に青い衣装を纏った長身痩躯はいささか頼りなくすら見える。だがその眼差しは、深く透徹な知性を秘めているのが珠にもわかった。
珠は父が嫁入りを決めた日のことを思い返した。
本来、婚礼とは忌むべき物とされてきた。子が妻を娶るということは、親が年老いるということでもあるからだ。また、日没後の昏い時刻に婚礼を行うのは「陽」である男性が「陰」である女性を迎えるためだった。婚礼の「婚」に「昏」が含まれているのはそのことに由来している。そして「陰」を迎えるということから馬車も衣装も黒と決められていた。しかし時代が進むにつれて婚礼を祝い事とみなす習慣が生まれ、衣装も黒からより明るい青い物へと変化を遂げていった。
「私は諸葛亮。字(あざな)は孔明です。今日からあなたの夫となります」
落ち着いた静かな声とともに顔を覆う布がそっと取り去られた。そこで珠はようやく夫となる男性の顔を見ることができた。
――水のような人。
感じたのは、静かな冷たさ。夫となる亮は澄んだ泉のような透明な気を漂わせていた。珠と同様に青い衣装を纏った長身痩躯はいささか頼りなくすら見える。だがその眼差しは、深く透徹な知性を秘めているのが珠にもわかった。
珠は父が嫁入りを決めた日のことを思い返した。