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臥龍の珠
第3章 三顧の礼
「見たか? あの奥方。噂通りの醜女だったな。臥龍先生ってのはとんだ悪趣味だぜ」
再び雪道をとんぼ返りさせられた張飛はいたくおかんむりだった。腹いせとばかり苛立ちの矛先を珠に向ける。
「人様のご妻女を悪くいうものではない。色は確かに黒いが、なかなか可愛らしい顔立ちをしていたぞ? それにご妻女には家柄という、非常に強い後ろ楯がある」
「家柄ねえ」
「そうだ。黄家といえば、景升公(劉表)とも縁続きの家柄だ。そして臥龍先生の姉上もホウ令明(徳公)殿のご子息に嫁いでおられる」
「なんだ。あんな家に住んでいるくせに実はいいところのお坊ちゃん、ってわけかよ」
「まあ、そうだ」
張飛は亮が名族の出と聞いて、鼻白んだ顔をした。取り立てて何も言わないが、実は身分の高い人間が嫌いな関羽も、苦虫を噛み潰したような表情になる。
「それでも私たちには彼らのような者が必要なんだ。彼らの才覚と横の繋がりがな」
劉備に亮を推したのは徐庶だった。徐庶は劉備と以前より親しくしており、正式な劉備陣営の一員ではないものの、一種の幕僚のような立場にあった。徐庶は劉備に足りないものは大局を見据えることのできる眼と名士の協力であることを見抜いており、曹操の策略で荊州を去る前に、劉備に亮を推したのだった。
「あーあ、また出直しかよ」
「そう腐るな。今の私たちには彼の力が必要なのだ」
劉備は不満をを漏らす張飛らを宥めすかしながら、隆中を離れたのだった。
再び雪道をとんぼ返りさせられた張飛はいたくおかんむりだった。腹いせとばかり苛立ちの矛先を珠に向ける。
「人様のご妻女を悪くいうものではない。色は確かに黒いが、なかなか可愛らしい顔立ちをしていたぞ? それにご妻女には家柄という、非常に強い後ろ楯がある」
「家柄ねえ」
「そうだ。黄家といえば、景升公(劉表)とも縁続きの家柄だ。そして臥龍先生の姉上もホウ令明(徳公)殿のご子息に嫁いでおられる」
「なんだ。あんな家に住んでいるくせに実はいいところのお坊ちゃん、ってわけかよ」
「まあ、そうだ」
張飛は亮が名族の出と聞いて、鼻白んだ顔をした。取り立てて何も言わないが、実は身分の高い人間が嫌いな関羽も、苦虫を噛み潰したような表情になる。
「それでも私たちには彼らのような者が必要なんだ。彼らの才覚と横の繋がりがな」
劉備に亮を推したのは徐庶だった。徐庶は劉備と以前より親しくしており、正式な劉備陣営の一員ではないものの、一種の幕僚のような立場にあった。徐庶は劉備に足りないものは大局を見据えることのできる眼と名士の協力であることを見抜いており、曹操の策略で荊州を去る前に、劉備に亮を推したのだった。
「あーあ、また出直しかよ」
「そう腐るな。今の私たちには彼の力が必要なのだ」
劉備は不満をを漏らす張飛らを宥めすかしながら、隆中を離れたのだった。