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臥龍の珠
第3章 三顧の礼
 外から誰かを呼ばわる声が聞こえた。応対した珠が亮を振り返り頷く。亮は門まで出向き、拱手で客人たちを迎えた。

「ようこそ左将軍殿。諸葛亮、字は孔明と申します」
「私は劉備。字は玄徳です。これなるは我が義弟関羽に張飛、そして趙雲と申す者です」
「ご高名はかねがね伺っております。寒いですからどうぞ中へ」

 亮は先に立ち、劉備たちを中へと案内した。のどかな田舎に似合わぬ眼光鋭い男たちが亮のあとに続く。劉備は身の丈七尺五寸(約一七二センチ)ほど。「大耳公」のあだ名通り耳が大きく、腕が非常に長かった。

「臥龍先生はお身体の具合はいかがですか」

 招き入れられた劉備は亮の具合を真っ先に問うた。いくら知略に優れていても、虚弱であれば幕僚に加えるには不安がある。

「どうか孔明とお呼びください。身体の方はこの通りすっかり回復しております」

 亮は白皙の顔をほころばせた。頬にはうっすらと赤みが差し、健康面に問題はなさそうだ。

「それはよかった」

 亮につられて劉備も白い歯を見せた。だがすぐに表情と姿勢を改めた。
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