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臥龍の珠
第1章 青の婚礼
「あなたは決して不美人ではありません。いわゆる白い肌や濡れたような黒髪は、あくまでも一般的な美の基準に過ぎません。世の基準からは外れていても、私にはあなたの艶やかな肌や、灯りをうけて黄金色に輝く髪はとても魅力的に映ります」
「一般的な美の基準」は亮にこそ当てはまるだろう。これが逆だったらよかったのに、と珠は残念に思った。だが夫の優しい心遣いは嬉しかった。父の人を見る目は正しかった。亮となら、きっと夫婦として上手くやっていける。
「ああ、私の家族を紹介しないといけませんね。弟の均です」
亮はまだ幼さを残した青年を手招いた。青年は兄嫁となる珠に深く頭を下げた。
「初めまして、義姉上。諸葛均、字は子貢と申します。年は十三になりました」
均が十三と聞き、珠は驚いた。長身なので年は亮とそう変わらないと思っていたからだ。亮は均よりさらに背が高く、おそらく八尺(一八四センチ)は越えている。諸葛家は長身の一族なのだろう。
「父は大分前に身罷り、継母は兄と共に江東におります。荊州へは叔父を頼って参りましたが、その叔父も既に亡く、姉も他家に嫁いだため、今は弟と二人晴耕雨読で暮らしています」
亮の荒れた手は、自ら鍬を持ち、働く者の手だった。珠は一瞬でも冷たく荒れた手を嫌悪したことを恥じた。
「一般的な美の基準」は亮にこそ当てはまるだろう。これが逆だったらよかったのに、と珠は残念に思った。だが夫の優しい心遣いは嬉しかった。父の人を見る目は正しかった。亮となら、きっと夫婦として上手くやっていける。
「ああ、私の家族を紹介しないといけませんね。弟の均です」
亮はまだ幼さを残した青年を手招いた。青年は兄嫁となる珠に深く頭を下げた。
「初めまして、義姉上。諸葛均、字は子貢と申します。年は十三になりました」
均が十三と聞き、珠は驚いた。長身なので年は亮とそう変わらないと思っていたからだ。亮は均よりさらに背が高く、おそらく八尺(一八四センチ)は越えている。諸葛家は長身の一族なのだろう。
「父は大分前に身罷り、継母は兄と共に江東におります。荊州へは叔父を頼って参りましたが、その叔父も既に亡く、姉も他家に嫁いだため、今は弟と二人晴耕雨読で暮らしています」
亮の荒れた手は、自ら鍬を持ち、働く者の手だった。珠は一瞬でも冷たく荒れた手を嫌悪したことを恥じた。