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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第29章 マイスターの報酬
「…あん、やっ!」
手で胸を柔らかく包まれると同時に、耳にぬるりと暖かく濡れたものが触れるのを感じました。
「や、だめぇ…あぁん!」
耳を擽られたあと、ぱくっと耳朶を食まれ、姫の体が震えました。
「やっ…みみっ…やぁ、さっ…!」
姫は、堪え切れずに名前を呼ぼうとして、はっとしました。

(『これを外すまでの間は、俺をあいつとして扱え』)

「ふ、っ」
先刻言われた言葉が枷になり、喉が詰まったようになりました。
姫が息を整えていると、耳元から気配が消えて、ばさっとスカートが捲られました。
「んんんっ!」
姫は思わず、自分の口を手の甲で押さえました。
すっかり力が抜けている両足を、スカートの被さった部分だけに触れながら、広げられているのを感じます。
「あ、なに…きゃ!」
広げられた足の一番奥に、急に何かが触れました。
「あん、やんっ!やだ、やぁ」
くちゅっ、くちゅっと、湿った音が聞こえてきます。
広げられて外気に晒され、冷たく感じたことで気がついたのですが、そこは誰も触れないうちから、ぐっしょりと濡れておりました。

(…あ…、えっ…あ、まさか)
器用にくちゅくちゅと泥濘を搔き回している物が何なのか、姫には最初分かりませんでしたが。
「ゃああん!」
ちゅっとそこを吸い上げられて、それが「彼」の唇と舌だと分かりました。
「やぁ…めっ…う、っ」
(サクナっ…やぁ)

弄られれば弄られるほど、そこの潤みは増すようでした。
先程手に垂れたオレンジの果汁のように滴って、お尻の方まで垂れて濡らしているように思えました。

「んっ、んっ…、あ!?っだめぇ、それ、やだぁ!」

舌が、昨日自分の手で触れた、柔らかい襞をなぞり始めました。
「彼」の舌が触れると、昨日触ったのと同じ形がなぞられているのが、見ているように分かりました。

(やだ、食べられちゃう…サクナに、全部、)
姫の閉じている目の中に、「彼」が食べてしまったオレンジの薄皮が思い浮かびました。
人が人に、そう簡単に食べられるわけが有りません。
馬鹿げていると分かっているはずですが、その想像が浮かんだ途端、姫の背中が痺れるように疼きました。

(あ、サクナぁ、だめぇ…あ、やだっ、)
声に出せない名前を胸の奥で呼べば呼ぶほど、自分に突き刺さるような気がします。
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